ベンチプレスを始めたばかりの方や、筋力を伸ばしたい方の中には、「何キロ上げたらすごいのか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
実際、ベンチプレスは筋力の指標としてよく用いられ、自分の実力を知るうえで重要な要素の一つです。
本記事では、ベンチプレス130kgを挙げる現役パーソナルトレーナーである私が、体重比やRMなど、レベル別の指標を基に「何キロからすごいと言えるのか?」を解説します。
初心者から上級者までの目安や、男女別・高校生の平均重量についても詳しく説明するので、トレーニングの目標設定に役立ててください。
さらに、ベンチプレスの重量を伸ばす具体的な方法や、伸び悩む原因について、過去にベンチプレス世界記録を樹立した佐竹優典さんのアドバイスもご紹介します。
目次
「体重比」と「RM」とは?ベンチプレスのすごさの判断に必要
ベンチプレスの重量が「すごい」と判断される基準には、さまざまな要素があります。
例えば、100キロを上げられたとしても、体重が変わればその凄さは変わりますよね。
本章では、特に重要な指標である体重比やRM(レペティション・マキシマム)について詳しく解説し、それを抜きにしても大体、平均的にどのくらいの重量を上げたらすごいと言われるのかについてもご紹介していきます。
体重比とは
体重比とは、体重とベンチプレス重量の比率です。体重に対してベンチプレスの重量がどれだけであるのかを把握するための数値。
ベンチプレスで目標とすべき重量は体重別に異なるため、目標決定の際も体重比を理解する必要があります。
たとえば体重50kgの人と、体重100kgの人では、同じ100kgのベンチプレスを上げたときの体重比が異なります。
50kgの人は2倍で、体重100kgの人は1倍。つまり、体重50kgで100kgを上げた方が体重比が大きく優れた記録を残したことになります。ベンチプレスの成績は体重比で計った方が、より正確に熟練度や能力を計れます。
RMとは
RMとは、Repetition Maximumの略語で、ベンチプレスの重量に対して、何回持ち上げられるのかを表す数値です。
1回持ち上げられる場合は1RMで、5回持ち上げられる場合は5RMと表現します。ベンチプレスの熟練度や能力は多くの場合、1RMで表されます。1RMを知りたい場合は、公式で計算したり、早見表で確認したりするとよいでしょう。
1RM(最大挙上重量)の計算式
1RMの計算式は次のとおりです。
1RM(最大挙上重量)=重量×回数÷40+重量
たとえば60kgを5回上げられた場合、1RMは次のとおり。
60×5÷40+60=67.5(約68kg)
以上から、60kgを5回上げられる人の1RMは約68kgとなります。つまり68kgの重量を、1回だけ上げられる能力があるということです。
RM早見表
以上の計算式を早見表にすると、次のとおりです。
重量/回数 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | 7回 | 8回 | 9回 | 10回 | 11回 | 12回 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
40 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 |
42.5 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 |
45 | 47 | 48 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 59 |
47.5 | 50 | 51 | 52 | 53 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 61 | 62 |
50 | 53 | 54 | 55 | 56 | 58 | 59 | 60 | 61 | 63 | 64 | 65 |
52.5 | 55 | 56 | 58 | 59 | 60 | 62 | 63 | 64 | 66 | 67 | 68 |
55 | 58 | 59 | 61 | 62 | 63 | 65 | 66 | 67 | 69 | 70 | 72 |
57.5 | 60 | 62 | 63 | 65 | 66 | 68 | 69 | 70 | 72 | 73 | 75 |
60 | 63 | 65 | 66 | 68 | 69 | 71 | 72 | 74 | 75 | 77 | 78 |
62.5 | 66 | 67 | 69 | 70 | 72 | 73 | 75 | 77 | 78 | 80 | 81 |
65 | 68 | 70 | 72 | 73 | 75 | 76 | 78 | 80 | 81 | 83 | 85 |
67.5 | 71 | 73 | 74 | 76 | 78 | 79 | 81 | 83 | 84 | 86 | 88 |
70 | 74 | 75 | 77 | 79 | 81 | 82 | 84 | 86 | 88 | 89 | 91 |
72.5 | 76 | 78 | 80 | 82 | 83 | 85 | 87 | 89 | 91 | 92 | 94 |
75 | 79 | 81 | 83 | 84 | 86 | 88 | 90 | 92 | 94 | 96 | 98 |
77.5 | 81 | 83 | 85 | 87 | 89 | 91 | 93 | 95 | 97 | 99 | 101 |
80 | 84 | 86 | 88 | 90 | 92 | 94 | 96 | 98 | 100 | 102 | 104 |
82.5 | 87 | 89 | 91 | 93 | 95 | 97 | 99 | 101 | 103 | 105 | 107 |
85 | 89 | 91 | 94 | 96 | 98 | 100 | 102 | 104 | 106 | 108 | 111 |
87.5 | 92 | 94 | 96 | 98 | 101 | 103 | 105 | 107 | 109 | 112 | 114 |
90 | 95 | 97 | 99 | 101 | 104 | 106 | 108 | 110 | 113 | 115 | 117 |
92.5 | 97 | 99 | 102 | 104 | 106 | 109 | 111 | 113 | 116 | 118 | 120 |
95 | 100 | 102 | 105 | 107 | 109 | 112 | 114 | 116 | 119 | 121 | 124 |
97.5 | 102 | 105 | 107 | 110 | 112 | 115 | 117 | 119 | 122 | 124 | 127 |
100 | 105 | 108 | 110 | 113 | 115 | 118 | 120 | 123 | 125 | 128 | 130 |
102.5 | 108 | 110 | 113 | 115 | 118 | 120 | 123 | 126 | 128 | 131 | 133 |
105 | 110 | 113 | 116 | 118 | 121 | 123 | 126 | 129 | 131 | 134 | 137 |
107.5 | 113 | 116 | 118 | 121 | 124 | 126 | 129 | 132 | 134 | 137 | 140 |
110 | 116 | 118 | 121 | 124 | 127 | 129 | 132 | 135 | 138 | 140 | 143 |
112.5 | 118 | 121 | 124 | 127 | 129 | 132 | 135 | 138 | 141 | 143 | 146 |
115 | 121 | 124 | 127 | 129 | 132 | 135 | 138 | 141 | 144 | 147 | 150 |
ベンチプレスで持ち上げた重量である縦の数値と、持ち上げた回数である横の数値が交わる位置が1RMの記録です。
ベンチプレスは何キロから凄いと言われるのか
先述した体重比やRMから考えて、一般的に以下のようにベンチプレスのレベル分けができるでしょう。
- 初心者
- 体重の0.5~0.8倍を1RM(1回)
- 中級者
- 体重の0.8~1.4倍を1RM(1回)
- 上級者
- 体重の1.5~1.8倍を1RM(1回)
この中でも「すごい」と言われるレベルは 上級者以上 に該当します。先述の体重比やRM(レペティション・マキシマム)の表を参考にすると、例えば体重が70kgの人であれば、1RMで105kg、4RMで95kg、8RMで87.5kg を挙げられれば「すごい」と言えるでしょう。
また、体重に関係なく、一般的に「100kgを挙げられたら強い」と感じられるような平均的な基準も存在します。
ここからは、
- 「自分の体重を10回挙げた場合」
- 「女性の場合」
- 「高校生の場合」
に分けて、「すごい」と言われる平均値や基準について解説していきます。
自分の体重を10回上げた場合
先述の体重比を基に考えると、体重と同じ重さを10回挙げられると、初心者を脱して中級者レベル と見なされます。そのため、「すごい」と思われるかどうかで言えば、答えは ノー でしょう。
しかし、これまで初心者から上級者まで多くのベンチプレスを見てきた私の視点では、体重と同じ重量を10回挙げられる筋力であっても、トレーニングの質によっては「すごい」と感じることがあります。 例えば、
- 「バーを下ろすのに4秒かける」
- 「胸で3秒止める」
など、重量以外の要素で強度を高めている人を見ると、たとえ体重の10回しか挙げられなくても、その技術やコントロールの高さに「すごいな」と感じることがあります。
女性の場合
女性の場合、以下のように平均的なベンチプレス重量は男性と比べて低めですが、十分にトレーニングを積めば高重量も上げられます。
- 初心者:20~30kg
- 初級者:30~40kg
- 中級者:40~50kg
- 上級者:50kg以上
このように、女性においては40kg以上を上げられれば、「すごい」と言えるでしょう。
高校生の場合
高校生は成長途中のため、体重やトレーニング歴によって大きく異なりますが、以下が一般的な目安です。
体重(kg) | 初心者(kg) | 初級者(kg) | 中級者(kg) |
50 | 20~30 | 30~40 | 40~50 |
60 | 30~40 | 40~50 | 50~60 |
70 | 40~50 | 50~60 | 60~70 |
このように、高校生の場合、体重と同じ重量を上げることができたら「すごい」と言えるでしょう。
ベンチプレスの目標重量は自分の体重を基準に決めよう

ベンチプレスの目標重量は自分の体重を基準に決めるとよいでしょう。ここでは、JPA技術委員会委員長・中尾達文氏の著書をもとに、ベンチプレスの目標重量を解説。(参考:JPA技術入門講座<9>)
JPAとは、日本パワーリフティング協会のことを指します。ベンチプレスの目標が分からない場合は、一つの目安として参考にしてください。
男性の場合
男性における1回挙上重量(1RM)の目標は、まずは自分の体重の1.5倍がおすすめ。また自分の体重と同重量のバーベルで10回×5セットを目標にするとよいでしょう。
以上の目標が達成できたら次に、自分の体重の1.3~1.5倍にあたる重量を1~3回くらい上げられとよいでしょう。
女性の場合
女性における1回挙上重量の目標は、まずは自分の体重と同じ重量がおすすめです。また自分の体重に対して、半分の重量にあたるバーベルで10回×5セットを目標にするとよいでしょう。
さらにもっと上げられるようになったら、自分の体重の70%~90%にあたる重量で1~3回のプレスができる状態を目標にしてみてください。
レベル別のベンチプレス目標重量

ここでは、ベンチプレスの重量計算専門サイトである「STRENGTH LEVEL」に記載されている目標重量を紹介します。「STRENGTH LEVEL」では、2千万回を超える記録に基づき、各体重のレベル別目標重量が計算されています。
各体重におけるレベル別の目標重量
各体重におけるレベル別の目標重量は次のとおりです。
体重 | 未経験者 | 初心者 | 中級者 | 上級者 | エキスパート |
---|---|---|---|---|---|
50 | 23 | 37 | 55 | 77 | 102 |
55 | 28 | 43 | 63 | 86 | 112 |
60 | 33 | 49 | 70 | 95 | 121 |
65 | 38 | 55 | 77 | 103 | 130 |
70 | 43 | 61 | 84 | 110 | 139 |
75 | 47 | 67 | 91 | 118 | 147 |
80 | 52 | 72 | 97 | 125 | 155 |
85 | 57 | 78 | 103 | 132 | 163 |
90 | 61 | 83 | 109 | 139 | 171 |
95 | 65 | 88 | 115 | 145 | 178 |
100 | 70 | 93 | 121 | 152 | 185 |
引用元:STRENGTH LEVEL
以上を参考にして、自分の体重に対する目標体重を把握するとよいでしょう。
各レベルにおける体重に対するベンチプレス重量の割合
前項の表からもわかるように体重によって目標重量が大きく異なります。そのため、体重に対するベンチプレスの目標重量を割合で表した数値(重量比)にも幅があります。熟練ごとの対する、重量比は次のとおりです。
- まったくの未経験者:46%~70%
- 初心者:74~93%
- 中級者:110~121%
- 上級者:152~154%
- エリート:185~204%
レベルで別にみると、自分の体重以上を持ち上げられる状態(体重比100%)になると、初心者を脱して中級者になれます。自分の体重以上を持ち上げられるようになったら、「中級者だ!」と胸を張ってもよいのかもしれません。
ベンチプレスの重量を伸ばす方法
ベンチプレスの重量を伸ばすためには、正しいフォームや手幅、重量設定が鍵となります。
当メディアではベンチプレスの重量を伸ばす方法を、世界記録を樹立した佐竹優典さんに、その秘訣をお聞きした記事を用意しています。
ぜひ、ベンチプレスを伸ばしたいと考えている方はご覧ください。
ベンチプレスで伸びない原因は?

ベンチプレスの伸び悩みの原因は次のとおりです。
- トレーニングをやり過ぎている
- インターバルが短い
- セットごとに重量を落としている
- たんぱく質が足りていない
まずは原因を分析して、伸び悩みの問題を解決しましょう。
ベンチプレスを100kg目指している方は以下の記事もおすすめです。
トレーニングをやり過ぎている
トレーニングをやり過ぎると、筋疲労が回復せずに、パフォーマンスが低下して記録が伸びません。とくに、回数を増やし過ぎてオーバーワークにならないように注意してください。回数を増やすのではなく、リフトする重量を限界に設定して、回数を減らすことも大切です。
インターバルが短い
インターバルとは、ベンチプレスのセット間にとる休憩です。筋肉を大きくしたり、筋力アップを図ったりしたい場合は、5分以上のインターバルが理想。
セット数を重ねても、インターバルの時間を確保して、設定した重量をしっかり上げられることが重要です。
セットごとに重量を落としている
セットごとにベンチプレスの重量を大きく落とすと、筋力アップを図れません。ベンチプレスの重量を落とす場合は、極力幅を小さくすることが重要です。
たとえば、60kg3回を1セットとしたとき、3セット目に3回目を上げられなかった場合を考えみましょう。
この場合、はじめから1セット3回を上げられる重量を設定するのではなく、3回目で挙げられなかった時点で55kgに落として3回目を上げようとすることが重要。挙げられないときに限り、なるべく小さな幅で重量をおとす点がポイントです。
たんぱく質が足りていない
たんぱく質が足りていない場合も、筋肉が大きくならずに記録が伸びません。筋トレで筋肉を増やしたい場合は、体重1kgあたり少なくとも1.6~1.7gのたんぱく質を摂取した方がよいでしょう。
カツオやサケ、鶏むね肉、牛もも肉などを積極的に食べるようにしてください。足りない場合は、プロテインによる補給も検討してみてはいかがでしょうか。
傷ついた筋肉細胞が修復でき、筋肉の増加につながるといわれています。
まとめ
ベンチプレスは、体重比やRM(レペティション・マキシマム)を基準に「すごい」と判断される重量が異なります。本記事では、初心者から上級者までの目安を詳しく解説し、男女や高校生の基準についても紹介しました。
- ベンチプレスの「すごさ」の基準
一般的に、体重の1.5倍以上の重量を持ち上げられれば「すごい」と言われます。また、体重と同じ重さを10回挙げられると、初心者を脱した中級者レベルと見なされます。 - 男女・高校生の目安
女性の場合、40kg以上を上げられれば「すごい」と言えるレベル。高校生は体重と同じ重量を上げられれば十分な筋力があると評価されます。 - 重量を伸ばすためのトレーニング方法
- 8~12RMで筋肥大を狙う
- 3~6RMで筋力向上を目指す
- 休息(インターバル)を適切にとる
- タンパク質やクレアチンの摂取で筋肉の成長をサポート
- 伸び悩みの原因と解決策
- トレーニングのやりすぎによる疲労
- セットごとに重量を下げすぎる
- インターバルが短すぎる
- タンパク質摂取が不足している
ベンチプレスの記録を伸ばすには、適切な目標設定とトレーニング戦略が重要です。正しいフォームや食事を意識しながら、無理なく継続することで、着実に成果を出していきましょう。