ダンベルプルオーバーは、上半身のあらゆる筋肉を鍛えるトレーニングですが、やり方によっては大胸筋に刺激を与えることができる万能な種目です。
ボディビルや俳優で有名なアーノルド・シュワルツェネッガーもこのプルオーバーで大胸筋を筋肥大させていたという話も有名です。
今回は、2023年の世界ボディビル選手権でクラシックボディビル-168cm部門で優勝し、大胸筋のトレーニングではダンベルプルオーバーを必ず取り入れるという五味原領(ごみはら・れい)さんに、正しいやり方を伺いました。
目次
ダンベルプルオーバーの目的とメリット
プルオーバーを行う目的の一つは、胸郭を大きく開くことです。
猫背気味の方や肩が前に出やすい方は、通常のベンチプレスなどのトレーニングをすると肩に負担がかかり、胸に効かせづらい場合があります。
しかし、プルオーバーなら胸にしっかりと効かせられることが多いため、そういった方にもおすすめです。
さらに、プルオーバーには以下のようなメリットがあります
- 胸郭を開く
胸郭が後方に引っ張られた状態で呼吸を行うことで、胸郭が広がりやすくなります。その結果、大胸筋が単に大きくなるだけでなく、胸の厚みも増します。 - プレス種目への効果
胸郭が開き厚みが増すことで、ベンチプレスなどの種目でも胸に効きやすくなる副次的な効果がある。
また、プルオーバーは以下の要素を鍛えるための練習にもなります。
- 前鋸筋のコントロール
- 肋骨を締める感覚の習得
これらは腹圧を高める際にも役立つ基本的な要素で、他のトレーニング種目にも応用が可能です。
ダンベルプルオーバーはどこに効く?
プルオーバーは肩関節の屈曲と伸展を通じて、複数の筋肉を効率的に鍛えることができる種目です。この動作により、それぞれの筋肉がどのように関与するかを解剖学的に解説します。
大胸筋
プルオーバーの動作では、特に肩関節を伸展する際に大胸筋が伸張され、ダンベルを戻す過程で収縮します。また、胸郭が拡張されることで、胸全体の厚みを向上させる効果があります。
背中
広背筋は肩関節の伸展と内旋を担う筋肉であり、プルオーバーでは肩を後方に引き下げる動作で主に働きます。特にダンベルを下げた際に広背筋が強く伸張され、そこから収縮する過程で背中の筋肉を鍛える効果があります。
上腕三頭筋
ダンベルプルオーバーでは主に上腕三頭筋の長頭に効いてきます。
上腕三頭筋の長頭は関節と肘関節の両方にまたがる筋肉で、プルオーバーでは、肩関節を伸展させる際に長頭が強く働きます。
さらに、ダンベルを持ち上げる際には肘の伸展動作も行われるため、内側頭や外側頭なども刺激され、結果、上腕三頭筋全体が刺激されます。
ダンベルプルオーバーで大胸筋に効かせる正しいやり方
ダンベルプルオーバーは背中や上腕三頭筋などあらゆる筋肉に刺激を与えられることがわかりましたが、ここからは実際にダンベルプルオーバーで大胸筋に効かせる正しいやり方について解説していきます。
ベンチのセッティング
最初にベンチのセッティングについて説明します。
おすすめは、インクライン(ベンチを一段上げた状態)で行う方法です。これにより、胸の上部を狙いやすくなります。
ダンベルの持ち方・グリップ
ダンベルは画像のように、親指側でしっかりと支えるように持ちます。
ダンベルの降ろし方
ダンベルを肩関節を支点にして後方へ下ろしていきます。
この際、肋骨が大きく開きすぎないように注意し、引っ張られる力に抗いながら肋骨をコントロールします。
ダンベルに引っ張られる力に対抗して、前鋸筋と腹筋を使って肋骨を下に締めるイメージで行います。
ダンベルの持ち上げ方
ダンベルを持ち上げるときは、胸を丸めないように意識してください。持ち上げる時にむしろ胸を張り、身体を上方に引き上げながら動作を行うイメージです。
イメージのおすすめは、高い台に登るような感覚で動かすことです。
頭の位置
頭をベンチから少し出すことで、首への負担を軽減できます。首に痛みがある方は特に注意し、この方法を試してみてください。
ダンベルプルオーバーは最強の胸種目
今回は、大胸筋を狙ったプルオーバーの方法について解説しました。
動きは肩の屈曲伸展動作となっており、ダンベルフライなどで肩が痛い人でもダンベルプルオーバーであれば大胸筋を鍛えることができる最強の胸のトレーニングです。
私自身、肩が痛くてプレス系のトレーニングやダンベルフライなどができない時でも、プルオーバーは実施することができ、十分筋肥大させることができました。
ぜひ、今回のやり方を試してみてください。